チワワの小太郎
 
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●愛犬家のほのぼのエッセイ◆『犬もゆったり育てよう』 [2004年06月11日(金)]
犬もゆったり育てよう―「ぼんやり犬」養成講座
藤門 弘(著)

新潮社
¥ 570 [文庫] 2002-06
ISBN:9784102901595 / ASIN:4102901590
副題は“「ぼんやり犬」養成講座”。訓練などしないでゆったりのんびり犬を飼おう、という内容で、最初は飼育書の一種として読み始めたのだけど、読んでみるとなんだかちょっと違う。

犬をゆったり飼う方法が書いてあるのかと思いきや(いや、書いてあるのだけど)、それは私たち一般人の住宅事情や犬の飼育環境とあまりにかけ離れていて全然参考にならない。

なにしろ著者は北海道の広大な農場で3頭の大きい犬たちを放し飼いにして散歩させているという。リードはおろか首輪すら着けたことがないらしい。そりゃぁ、犬だってそんな状況で暮らしていたらゆったりのんびりするでしょう。まずここで「なんじゃこの本は」と少し怒りモード。

で、次には具体的な「ぼんやり犬」の育て方が書いてあるのだけど、まずは犬を選ぶところから始まる。つまり、「ぼんやり犬」はどんな犬でもなれるわけでなく、「ぼんやり犬」の素質のある犬を選んで育てるのだという。しかも「ぼんやり犬」候補は中型犬か大型犬がいいという。チワワはだめじゃん。犬種、血統、子犬の両親犬、両親犬の飼い主もよく見て将来「ぼんやり犬」となりそうないい子犬を選ぶのだそうだ。それじゃあ、「ぼんやり犬」になれないとされた子犬たちはいったい誰が育てるのよ、と突っ込みたくなる。世の中には里親活動とか熱心にしている人たちがいるというのにね。

犬をゆったり育てるっていったら、どんな犬でも自由に訓練などしないでのびのびと育てて、人も犬も幸せになれるような生活の提案が書いてるのかと思うじゃない。っていうか、その通りのことが書いてあるのだけど、訓練以前に何かが違う。

この辺まで読んでこの本はトンデモ本かもしれないと思い始めてしまったのだけど、ところがどっこい。ここから先を読み進めてみてハタと気づいた。この本は犬の飼育書なんかではないのだ。「愛犬家のほのぼのエッセイ」として読むのが正しい読み方なのだ。なぜかといえば、この著者、犬の専門家ではなく、長年多くの犬を飼ってきた愛犬家だから。

私の言う犬の専門家というのは、不特定多数の犬と飼い主と関わってきて犬について専門的に勉強している人のこと。この著者は作家であり写真家であり農場主である。その人生の中でたくさんの犬を飼ってきた。農場という場所で使役犬も飼ってきた。著者は盲導犬や警察犬や狩猟犬や牧羊犬などの仕事をする犬には訓練は必要と言っている。すべての犬にのんびり生活を、というのでなく、あくまで家庭犬として飼うには「ぼんやり犬」がいいよ、と言っているのだ。

そこで、自分が今まで飼ってきた犬との関わり、体験談、本から得た知識などを盛り込んで「ぼんやり犬」の良さについて語っているのだった。だから、これから犬を飼う人の参考にはなるかもしれないけれど、すでに犬を飼っている人にはあんまり参考にならない。だけど、犬と関わる姿勢とか、犬への愛情(形はどうあれ)はとてもよく伝わって、読んでいてほのぼのする箇所もいっぱいある。だからこの本は、ある愛犬家のエッセイとして読めばすごく楽しめる本なのだ。

犬の専門家ではないから、どこか素人っぽい話もある。母親のためにもらってきたラブラドール・レトリーバーの子犬が元気すぎて育てきれなくて、結局、知人に譲ってしまったとか、性格が荒い大型犬をもらったものの、人に噛みついて結局、安楽死させたとか、オイオイと突っ込みたくなる話も。

カヌーイストの野田知佑さんとその愛犬ガクに憧れて自分も犬を連れて旅に出てみたくなって、いままで首輪なんて着けたことのない犬に急に首輪とリードを着ける練習を始めてみたり(当然、犬は嫌がる)。こんなエピソードを読むととても犬のプロとは言えないのだけど、犬を愛する飼い主としてはなんだかほのぼのしてしまう。

すでに犬を飼っている人にはあまり参考にならない、と書いたけれど、ペットフードや獣医さんについては少し参考になるかもしれない。世の中のペットフードには死んだ牛や馬の肉が使われているものが少なくない。添加物だって、人間の食べ物には使用が禁止されているものが平気で使われていたりするらしい。獣医さんの診察料は病院によって全然違う。うんうん、そうだよね、と思ったり、なるほど、と思ったり。

ちなみに、この著者が犬たちにあげているフードはソリッド・ゴールドだそう。このフードは実はうちのチワワの小太郎も食べている。もちろん死んだ動物の肉は使っていないし、犬の健康を考えた自然食だ。保存料も入っていないから袋を開けたら早めに使い切らないと悪くなってしまう。犬の食いつきをよくするような成分も入っていないので、この本の著者の犬たちにはあまりウケがよくないようなのだけど、うちの小太郎はバクバク食べている。

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