□□□□□□□□□□□  茜色通信 Vol.0071   □□□□□□□□□□□ 2004/10/02 Sat.---Since2000/01/26  前号の発行部数149 =>>登録・解除・変更・バックナンバーはこちらから http://akane.pos.to/common/f/akaneiro.htm  「茜色通信」の読者登録をしていただきありがとうございます。  私のサイトの更新情報と日記(日々のほのぼの)のダイジェスト版を  お届けします。                  ◇ ◇ ◇  暑い暑いと思っていたら、いつの間にか朝晩はとても涼しくなって、  季節はすっかり秋。毎年、近所に咲くコスモスが満開になると秋だ  なぁと思います。先日は中秋の名月を眺めました。まんまるお月様  がとてもきれいでした。月を見るとなぜか郷愁の感があります。私、  実は宇宙人だったりして。   ◎毎日更新中! チワワの小太郎のこと、料理のこと、本のことetc... 「へにょへにょ日記」 http://plaza.rakuten.co.jp/fuwafura/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ _/Contents_/ ──────────────────────────────────── -- 今日のほのぼの -- ●家族に殺される「名誉の殺人」◆『生きながら火に焼かれて』                          [2004年08月03日(火)] ●おいしいとこどり◆『愛犬を賢くしつける』 [2004年08月04日(水)] ●SF冒険活劇!◆『ブラック・フラッグ・ブルーズ』 [2004年08月05日(木)] ●森の動物ブラフマンとチワワの小太郎◆『ブラフマンの埋葬』                          [2004年08月06日(金)] ●怖い。姫の首◆『陰陽師 首』 [2004年08月13日(金)] ●祖母と熱帯魚◆『エンジェル エンジェル エンジェル』                          [2004年08月15日(日)] ●財産あってこその散財◆『きものが欲しい!』 [2004年08月20日(金)] ●朗読というコミュニケーション◆『朗読者』 [2004年08月22日(日)] --サイト更新情報-- ★茜音 【ギャラリーと日記】 ★ぱんだ雑貨店 【壁紙とWEB素材】 ★チワワの小太郎 【癒し犬の写真と壁紙】 ★nuinui 【ぬいぐるみの部屋】 ★ちょこら 【小さな本屋さん】 ──────────────────────────────────── ※記事中の書名の下にあるURLは、オンライン書店bk1の書籍詳細ページの  URLです(特に断りのある場合を除きます)。 その本の内容、値段、大きさ  などの詳細情報のほか、bk1に投稿された書評なども読めます。   『オンライン書店 bk1』はこちら http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_top.cgi?aid=p-akane01465 ──────────────────────────────────── [PR] ■本だけじゃ物足りない。CD,DVD,ゲーム、PCソフト、電化製品などなど。 『Amazon.co.jp』はこちら  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/redirect?tag=akane-22&path=tg/browse/-/489986 ■いらなくなった本を Amazon.co.jp で売ることができます! 『Amazon.co.jp マーケットプレイスストア』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/redirect?tag=akane-22&path=tg/browse/-/1058424 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━             ◆ 今日のほのぼの ◆ ──────────────────────────────────── (日記もどき『日々のほのぼの』ダイジェスト版) 『日々のほのぼの』はこちら http://akane.pos.to/akane/f/honobono.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●家族に殺される「名誉の殺人」◆『生きながら火に焼かれて』                          [2004年08月03日(火)] ──────────────────────────────────── 『生きながら火に焼かれて』 スアド/著、松本百合子/訳(ソニー・マガジンズ)ISBN:4789722619 http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02434623 ──────────────────────────────────── 世界にはまだまだ私の知らないことがたくさんある。家族以外の男性と目線を 交わしたり会話をしたりしただけで、ふしだらな娘とされて家族の名誉のため に、実の家族の手によって殺されてしまう。「名誉の殺人」と呼ばれていて、 殺人者はときに英雄あつかいされる。現代にこんなことがまかり通っている社 会があるなんて、未だに人食い族がいるとか、頭の皮を剥ぐ原住民がいるとか 聞いたような衝撃。被害者は年に6千人を越えるという。 著者は婚前交渉によって妊娠し、両親も了解の上で義兄によって焼き殺されか けた。奇跡的に一命をとりとめ、ヨーロッパに渡った著者は現在は夫と子ども たちと暮らしているが、家族によって殺害される危険があるため、本名も素顔 も明かせないのだそうだ。 国によっては命を狙われている女性を刑務所に匿っているところもあるらしい。 しかし、刑務所を出てすぐに殺されてしまった女性も多い。遠く海外まで逃げ ても、追ってきた家族によって殺害されてしまう人もいるという。そして、 「名誉の殺人」の加害者は罪を軽くするという法律があるところまであるらし い。 こんな因習がまかり通っているのにはやはりそれなりの下地があって、この著 者が生まれ育ったイスラムの村は強烈な男尊女卑の社会なのだ。しかし、イス ラムだから、というのが理由かどうか、私にはよくわからないのだけど。イス ラムの村以外でもこういうことが行われているのかもしれない。 女であるというだけで、教育も受けられず、日常的に暴力を受け、家畜のよう に働き、自由な恋愛など到底認められない。親の決めた相手と結婚しても、男 の子が生まれなければ捨てられる。逆に、男の子であれば、それだけで家族中 からちやほやされ、女たちにかしづかれ、奉仕されるのだ。 著者は子どもの頃から自由に外出できず、学校など行っていなかったから、世 界のことはおろか、自分の家の近所のことすら知らないことだらけだった。も ちろん、読み書きもできない。この村の他の家庭がどうだったのかわからない。 著者の家族が極端だったのかとも思ったが、実際はおそらくどこの家庭もこの 著者の家とそれほど変わらなかったのだろう。 なにか失敗すれば父親からひどく殴られる。母親はたくさん子どもを生んだが、 生きているのは14人中7人か5人。あとの子どもはどうしたのか。生まれてすぐ に女の子だと分かった時点で殺されてしまった。この現場を著者は目撃したと いう。赤ん坊だけではない。著者の妹もどうやら弟によって殺されたらしい。 この社会では女は人間ではないのだ。女に人権などなく、家畜同然。生かすも 殺すも所有者である男の意思ひとつなのだ。そして、男も女も、それが普通だ と思っている。それは昔からずっと続いてきたこと。おかしいとは思っていな い。教育を受けられない女性たちは、男たちの言うことを聞くしかない。男た ちの言うことを聞いていれば殺されることはないのだ。 著者は男性が求婚してくれると信じて、逢い引きして体を許してしまう。17歳 か19歳だったというが、性に関する知識も男性の巧妙な嘘を見抜く術も知らな い。結婚前に男性と逢い引きするなどもってのほかだということは分かってい たが、彼が結婚してくれると信じていたのだ。そして妊娠。男は逃げてしまう。 お腹が目立つようになって、ついに家族にバレ、いつ殺されるかと恐怖におの のく。そして義兄によってそれは執行されてしまった。 重いやけどを負って病院に入院したが、満足な治療は受けられない。病院側も 「名誉の殺人」の被害者にはかかわりたくないのだ。やってきた父母に再び殺 されかけたが、危うく難を逃れる。そして、福祉団体で活動していたジャクリ ーヌの必死の努力によって助け出され、出産した長男とともにヨーロッパに渡 った。 やけどの治療や、言葉の修得、文化の違いなど彼女にとって決して楽な道では なかっただろう。だけど、努力によって自分の幸せをつかみ取った。やけどの 傷跡をコンプレックスに思いながらも、すばらしい夫と子どもに恵まれている。 長い間別れ別れに暮らしていた長男とも再び一緒に暮らしているという。そし て、自分の体験を語り、本として出版した。それによって私たちは女性たちが ひどい扱いを受けている社会があるのだということを知ることができた。彼女 と、彼女を助けたジャクリーヌや福祉団体の功績は大きいと思う。 この本を読んでいて思ったのは、この「名誉の殺人」を法律で認めないように するということはもちろん大事だが、女性たちに教育を受けさせることもとて も重要だということ。女性たちがもっと外の世界のことを知って、自分たちの 境遇を見つめ直したら、きっとこの社会は変わると思う。逆に言えば、男たち は女性が教育を受けることで自分たちが誇示してきた権力が失われることをお それているのだ。だから女性に教育など必要ないと言うのだろう。 生まれた社会によって命の重みが違うというのは悲しい。戦争で多くの命が奪 われるのも悲しいが、家族の手による殺人がまかり通ってしまう社会があると いうのもとてもショッキングな事実で、心が痛む。私はこんなにぬくぬくと暮 らしていいんだろうかと、なんだか自分の境遇を反省してしまうのだった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●おいしいとこどり◆『愛犬を賢くしつける』 [2004年08月04日(水)] ──────────────────────────────────── 『愛犬を賢くしつける』 ライフ・エキスパート/編(KAWADE夢文庫/河出書房新社) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02410500 ──────────────────────────────────── 犬のしつけのポイントをまとめた本。トイレや食事の基本的なものから、フリ スビーやシーソーなどちょっと高度な遊びまで幅広い。なるほど、と思うもの もあるけれど、どれもみんなエッセンスだけなので、あまり詳しくは書いてな い。 犬によっても違うだろうし、この本が実用的かどうかはちょっと疑問だけど、 犬の性質を簡単に知るにはいいかも。いままでのしつけ方の間違いも発見でき る可能性あり。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●SF冒険活劇!◆『ブラック・フラッグ・ブルーズ』 [2004年08月05日(木)] ──────────────────────────────────── 『ブラック・フラッグ・ブルーズ』演劇集団キャラメルボックス 2004年7月15日-8月17日 サンシャイン劇場 作・演出:真柴あづき+成井豊  出演(ヴィーナスキャスト):小川江利子、大内厚雄、坂口理恵、三浦剛、岡 田達也、中村恵子、實川貴美子、阿部丈二、篠田剛、大木初恵、大浦理美恵、 西川浩幸 ──────────────────────────────────── 昨日、演劇集団キャラメルボックスの『ブラック・フラッグ・ブルーズ』を観 てきた。平日だったけど、夏休みなのでサンシャインシティは混み混み。子ど も連れも多かった。 今回はほとんどの役がダブルキャスト。私が観たのは「ヴィーナス」キャスト。 もう一つは「マーズ」。どっちも面白そうなんだけど、ヴィーナスのほうが、 初演時と同じ役の人が多いのが特徴。初演はビデオで観ているのだけど、同じ 役を同じ役者で今回観れてちょっと感激。 キャラメルは最近、しっとりしみじみ系が多かったような気がする。久々のす かっとするSF活劇。久々って言っても、私が劇場に観に行くようになってか らはこういうの、あんまりなかったかも。ビデオでは観てたんだけど。生で観 たら楽しかったぁ。もっとやって欲しい。 原案はアン・マキャフリーという人の書いた『歌う船』というSF小説だそう。 小説を読んでないのだけど、舞台ではブレイン・シップという宇宙船が登場す る。事故などで身体が使えなくなった人の脳を宇宙船に組み込んでそのブレイ ン(脳)が宇宙船をすべてを管理し、操縦するという設定。 事故で大けがをしたマリナは20年前にブレイン・シップになった。当時3歳だ った娘の砂記(サキ)は成長して、宇宙船のパイロットの訓練生として他の訓 練生二人と共にマリナの船に乗り込む。途中で遭遇した故障した船から救助し た怪しげな二人組、海賊を護送中の刑事、パスワード解析に出世を掛ける美人 (?)鑑識官、一癖も二癖もある船長などが登場してドキドキハラハラの冒険 活劇が繰り広げられる。 劇場で販売されている「トーク&フォトブック」には作家の恩田陸さんとこの 作品の脚本家の真柴あずきさんの対談が載っていた。恩田さんがキャラメルの 作品を「誰にでも安心して勧められる」と言っていたのが印象的。そうか、私 もキャラメルのそういうところが好きなんだ、と再認識。 キャラメル作品って、安心して子どもにも勧められるもんね。劇団☆新感線な んかは面白いかもしれないけど、ちょっとアクがあるしなぁ。キャラメルは健 全だよね。そこがつまらないという人もいるんだろうけど。 演劇集団キャラメルボックス http://www.caramelbox.com/ ──────────────────────────────────── 『歌う船』 アン・マキャフリー/著、酒匂真理子/訳(創元SF文庫/東京創元社) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=00988323 ──────────────────────────────────── ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●森の動物ブラフマンとチワワの小太郎◆『ブラフマンの埋葬』                          [2004年08月06日(金)] ──────────────────────────────────── 『ブラフマンの埋葬』小川洋子/著(講談社) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02432881 ──────────────────────────────────── ブラフマンというのは主人公が飼っている森の小動物。主人公の一人称で語ら れていくのだが、固有名詞はこのブラフマン以外は登場しない。ブラフマンと いうのも物語の中で主人公が付けた名前で、もともとこの動物に名前はない。 それはラグビーボールくらいの大きさで、茶色い短い毛が生えていて、しっぽ が長くて、手足は短い。そして小さな手には水かきがある。で、結局なんとい う種類の動物なのか読者には最後まで明かされないのだ。 水の中を自在に泳ぐという点で、ビーバーのようだけど、もしかしたら違う動 物なのかもしれない。だけど、そんな名前なんて些細なことなのだ、きっと。 そして登場人物の名前だって些細なもの。この物語に出てくる人たちはみんな、 碑文彫刻家とか、レース作家とか、ホルン奏者とかその職業で呼ばれている。 主人公が恋している雑貨屋の娘も、ただ単に「娘」なのだ。そして主人公自身 は芸術家たちが集まる「芸術家の家」のただの「管理人」だ。 この芸術家の家というのが面白い。どうやらどこかの出版社が金を出して運営 しているらしいが、四季折々にさまざまな芸術家たちがやってくる。しばらく 滞在して作品を作って、また帰っていく。滞在期間も、芸術家のジャンルも年 齢も様々。 なんだか、架空の、ありえなさそうな施設に思えるが、実は私は大学時代に少 し似たような施設にお世話になったことがある。二週間ほど滞在して版画を制 作した。同じ大学の友人数人と、別の大学の数人が集まって、食事は自炊で合 宿のようで楽しく、余計なものがないので制作にも集中できた。とてもよい体 験だった。「芸術家の家」ほど洗練された感じはしないけど、管理人さんもい たし、読みながらそのときのことをしみじみと思い出してしまった。 ブラフマンは最初は傷だらけだったが、主人公の世話の甲斐あって、けがは快 復し、次第に慣れてくる。主人公がブラフマンの様子を描写するところは愛お しさに溢れている。短い毛が生えているとか、その体の大きさとか、うちのチ ワワの小太郎に共通していたりして、ついつい自分が小太郎を見ている目線と ダブってしまう。耳が小さかったり、しっぽがすごく長かったり、爪が鉤状だ ったり、水かきがあったり、手足がとても短かったり、小太郎とは違うんだけ ど、それでもやっぱりダブってしまう。細部まで愛しいというのはペットを飼 っている人共通なんだろうなと思う。 「芸術家の家」にずっといる碑文彫刻家との交流。雑貨屋の娘への恋心。ブラ フマンとの散歩。管理人の日々は淡々と過ぎてゆく。雑貨屋の娘は土曜日にや ってくる恋人と駅で待ち合わせて逢い引きする。そしてどこに行って何をする のか、管理人はよく知っている。ちょっと怖いくらいだ。人のデートを盗み見 ているなんて。 タイトルは『ブラフマンの埋葬』。そして最初から登場しているのが碑文彫刻 家。ブラフマンとの幸せな日々は、きっとこの物語の最後では終わってしまう のだな、と予感させる。それならばどのような終わり方をするのだろう。それ は始まりと同じように淡々と終わった。だけど、ブラフマンがいなくなっても、 きっと管理人はブラフマンと出会う前と同じような生活には戻れないだろうな と思う。その後のことは書かれていないけれど、管理人はまだ管理人を続けて いるのだろうか…。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●怖い。姫の首◆『陰陽師 首』 [2004年08月13日(金)] ──────────────────────────────────── 『陰陽師 首』夢枕獏/文、村上豊/絵(文藝春秋)ISBN:4163222707 http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02371357 ──────────────────────────────────── なにが怖いって、表紙の絵が怖い。平安の姫の首が中に浮いて、ニンマリと笑 っている。目は黄色く血走って、口からは牙と赤い舌がチロリと見えている。 書店でカバーをかけてもらうんだった…。 しかし、村上豊の味わい深い絵と夢枕獏の美しい文章のコラボレーションが素 晴らしい。この絵物語シリーズ、とってもいい。本の作りにこだわってる感じ がするのがね、いい。本の大きさは、妙に気張らない手のひらサイズ(新書を 正方形にしたくらいの大きさ)。紙は手触りのいいすこし厚みがあって黄みが かっているもの。 話自体は『陰陽師 龍笛ノ巻』(文藝春秋)に収録されているものと同じ。で も、この絵物語版は持っていて損はないのだ。 それにしても。表紙の首が怖いと思っていたら、中に出てくるクライマックス の場面の姫の首はもっと怖かった。夢に出てきそう。鬼の絵とか、罪人たちの 首は宙を舞っていてもちっとも怖くないのになぁ。姫の首は怖すぎるよ、村上 さん。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●祖母と熱帯魚◆『エンジェル エンジェル エンジェル』                          [2004年08月15日(日)] ──────────────────────────────────── 『エンジェル エンジェル エンジェル』 梨木香歩/著(新潮文庫/新潮社)ISBN:4101253358 http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02414744 ──────────────────────────────────── 梨木香歩の作品はファンタジーなのだけど、オカルトと紙一重なところがある。 『りかさん』で特にそう感じたけど、この作品もちょっとオカルトっぽい。 半分寝たきりでトイレに行くのにも付き添いが必要な祖母の世話をすることに なった主人公の女子高生がと祖母の交流を描いている。祖母の若い頃のエピソ ードと現代のエピソードが交錯しながらストーリーはすすんでいく。 祖母の世話と引き替えに飼うことを許された熱帯魚。そのモーターの音でどう やら祖母は覚醒するらしい。普段は半分痴呆のような状態なのに、主人公と会 話する祖母ははつらつとしている。若い頃の過ちを今、精算しているよう。 キーワードは「エンジェル」。ネオンテトラと一緒に飼ったエンジェルフィッ シュはその名に似合わず凶暴で、ネオンテトラたちは次々と餌食になってしま う。そのエンジェルフィッシュに自分を投影する祖母。自分たちはエンジェル なのか悪魔なのか。聖書の話も盛り込みつつ、少女たち(若い頃の祖母と現在 の孫)の心の葛藤を描いている。 この話の中に答えは出てこない。でも、最後に祖母は孫の言葉に救われたのか なと思わせぶりな終わり方。答えはないんだけど、梨木作品は、明確に答えが ないところに共鳴してしまうのかもしれないぁ。 やさしく祖母の世話をしながらも精神的に追いつめられていく主人公の母の描 かれ方が好き。何気ない脇役がストーリーを引き立てている感じがする。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●財産あってこその散財◆『きものが欲しい!』 [2004年08月20日(金)] ──────────────────────────────────── 『きものが欲しい!』群ようこ/著(世界文化社)ISBN:4418025170 http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02222851 ──────────────────────────────────── 群ようこの『きもの365日』(集英社文庫/集英社)を書店で見かけて気に なっていたのだけど、その前にこの本を出していることを知って、先にこっち を読んでみることにした。 著者のお母さんがどうやらきもの好きだったらしい。家庭の事情で持っていた きものを手放してしまったお母さんのために、作家になった娘はきものを買っ てあげるのだった。ええ話や…。 しかし、その買い方がものすごい。デパートの外商部できもの物色。大量購入。 そして代金は娘の口座から引き落とされる。こんな親いや〜。作家ってそんな にもうかるもんなのかしら。って友人に言ったら「群ようこって一時期すごい 流行ったよね〜」。そういえば。これって、その黄金期の頃のことなんだんだ ろうなぁ。まぁ、いまだって人気作家だけどさ。 お母さんもすごいけど、本人もきもので散財している。この本の帯に「使った お金で家が建つ」ってコピーがあるけど、ほんと、家くらい建っちゃう。きも のって高いもの。きつけ教室に通い始めて、ちゃんとした帯で10万円ってのは 安いほうなんだってことがだんだん実感としてわかってきた。最初に聞いたと きは「なぬっ?」って感じだったけど、いろいろ見ているうちに、自分で納得 したいい物を買うにはそれなりにお金がかかるってことが分かった。 つまり、きものっていうのは工芸品なのだ。職人さんが一生懸命手作業で作る ものはやっぱりいい。で、そういうものは高い。だからと言って、こういう品 物を安く買いたいと思うのは、買い手側からしたら都合がいいけど、職人さん の仕事の評価を貶めることになって、いい職人さんがいなくなってしまうこと にも繋がり兼ねないから、やっぱり高くてもしかたないと思う。いい品物が高 いというのはそれを作った人への正当な評価なのだ。 群さんはポリエステル否定派で、紬なんかを買ってるのよね。そりゃあ天然素 材のがいいけど、お金のない庶民は洗えるきものでガマンなのよ。洗えるきも のなら10万円以下で一揃え買える。 この本には佐藤愛子さんなど著名人との対談も収録されていて面白い。佐藤さ んかわいくてちょっとファンになってしまったけれど、本屋で著書を物色した もののあまり読みたいものがなかった。この人、エッセイストだったんだ。小 説家なのかと思ってたよ。 ──────────────────────────────────── 『きもの365日』群ようこ/著(集英社文庫/集英社)ISBN:4087477002 http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02443251 ──────────────────────────────────── ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●朗読というコミュニケーション◆『朗読者』 [2004年08月22日(日)] ──────────────────────────────────── 『朗読者』ベルンハルト・シュリンク/著、松永美穂/訳 (新潮文庫/新潮社)ISBN:4102007113 http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02327345 ──────────────────────────────────── 15歳の少年と36歳の女性。親子ほども年が違う二人が肉体関係を持ち、密会を 重ねる。やがて女性は少年の前から突然に姿を消してしまう。成長した少年が ふたたび彼女と出会ったのは法廷だった。 少年と中年女性(読む前はそう思っていたけど読んでみると36歳。微妙…)の 鬱屈した愛の物語、なのかと思っていたら、違ってた。うーん、ある意味合っ てるんだけど、私が思っていたのとは違ってた。もっと倒錯した感じなのかと 思っていたんだけど、意外とまともというか直球というか。うまく言えないけ ど。 冒頭での少年と女性との関係はちょっと倒錯している感じがするけれど、女性 と別れてしまったあとの少年(語り手)は常に傍観者的な立場で彼女のことを 見ている。それがなんとなく読んでいる方としても距離感が絶妙で、傍観して いる少年(この時点ではもう大人だけど)をさらに傍観している読者という感 じだった。 淡々としているのになぜか心の奥深くをえぐるような物語。カギになるのは女 性ハンナのある秘密なのだけど、これ、訳者あとがきでも書評でも伏せられて いる。伏せなくてもいいと思うのだけど(もうベストセラーだし)、なぜか私 の読んだ書評ではみんな伏せてあった。ので、ここでも一応、伏せておくこと にする。 少年がハンナに本を朗読する。その関係は再会後にも復活する。朗読という行 為だけを通してハンナと繋がりを保つ語り手の(元)少年。なんだか静かな、 静かな関係。会話でもなく、手紙でもなく、他人の書いたものを読むというだ け。それでも繋がりは保たれる。 ナチス時代の収容所看守というハンナの過去。そしてその罪。それから彼女の 秘密。少年の目を通して描かれるハンナという女性。淡々としたその視線から 彼女の心の機微も伝わってくるよう。 私はかなり前半で、ハンナの秘密は薄々分かってしまったのだけど、その秘密 に苦しみながらもそれを受け入れて甘んじて暮らすハンナという女性はいった いどういう生い立ちだったのだろう、と想像を巡らしてしまった。だけど、私 にはそれはよくわからなかった。彼女が強い人間なのか、弱い人間なのかも判 断がつかない。ある意味、強く、ある意味、弱い人間なのだと思う。彼女の精 神が高潔であるというのは強く感じた。正直で、まっすぐ。秘密を隠そうとす るけれども、それは彼女の高潔な精神がそうするのが正しいと判断した結果な のかもしれないと思う。 そして、そのハンナを深く理解していると思われる語り手の少年。彼の行動が 正しいのか間違っているのかわからないけれど、ハンナを一番よく理解してい た人間ではあったはず。しかし、その彼も予測できなかった彼女の死。その死 が彼女の高潔さをさらに強調しているような気がする。 ──────────────────────────────────── (茜音「日々のほのぼの」より) http://akane.pos.to/akane/f/honobono.htm ・・・・・・─・─・─・──・──・──→この続きも日々更新中です。 日記ブログ「へにょへにょ日記」は毎日更新中。。。 http://plaza.rakuten.co.jp/fuwafura/ ──────────────────────────────────── =[PR]================================ 日本最大級ショッピングサイト!お買い物なら楽天市場 http://pt.afl.rakuten.co.jp/c/000389a5.22be7a25/?url=http%3a%2f%2fwww.rakuten.co.jp%2f ==================================== 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