□□□□□□□□□□ 茜色通信 Vol.0042 □□□□□□□□□□ 2002/07/03 Wed.---Since2000/01/26  発行部数100 =>>登録・解除・変更はこちらから http://akane.pos.to/common/f/akaneiro.htm  「茜色通信」をご購読いただきありがとうございます。  私のサイトの更新情報と日記(日々のほのぼの)のダイジェスト版を  お届けします。    空気がジメジメしてどよ〜んとしています。今年は梅雨らしい梅雨。  油断していたら冷蔵庫に入れ忘れた食パンがカビの餌食に。気をつけ  ないとね。    病気をしていた時に、インターネットでの通信販売にお世話になりま  した。家にいながら商品をゆっくり選べて、買ったものを家まで届け  てくれるのってすごく便利です。特に外出できないときにはこれがか  なり気晴らしになりました。その余韻を引きずりながら、「茜音ミニ  ショッピングモール」なるものを作ってみました。広告バナーを集め  たサイトですが、案外、掘り出しもののサイトもあるんですよ。ウィ  ンドウショッピングの気分。個人的にはクッキーやお菓子のサイトに  行って目の保養をしています。もちろん、気に入ったら購入もできま  す。よろしければ、お気に入りのお店を探してみて下さいませ。    ★茜音ミニショッピングモール  http://akane.pos.to/shopping/ **********************************************************************          【    書籍のご案内    】      『Webカテゴリ別デザイン&配色パターンガイド』     シーズ/編・著(エムディエヌコーポレーション) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02137705     「茜音」http://akane.pos.to/ が掲載されています。トップページの   画像に解説が少しついて「文化」-「アート」というカテゴリのページ   にサンプルサイトとして載っています。 ********************************************************************** _/Contents_/ -- 今日のほのぼの -- ●少年は天才なのか〜『ひとが否定されないルール』 [2002年05月28日(火)] ●文章が書けないときもある [2002年06月02日(日)] ●2冊になってしまった〜『ヴェニスの商人』 [2002年06月04日(火)] ●夢のホテル〜『箱根富士屋ホテル物語』 [2002年06月05日(水)] ●久々の生舞台〜『四月になれば彼女は』 [2002年06月11日(火)] ●お祭り気分〜『銀河旋律』 [2002年06月13日(木)] ●自滅する恋〜『椿姫』 [2002年06月16日(日)] ●みちゃった〜映画『模倣犯』 [2002年06月23日(日)] ●不思議映像美。〜『玩具修理者』 [2002年06月26日(水)] ●魅力的なチェーホフ〜『かもめ・ワーニャ伯父さん』[2002年06月28日(金)] ●寒い世界〜『エンデュアランス号漂流』 [2002年06月30日(日)] --更新情報-- ★茜音 ★ぱんだ雑貨店 ★りんくる ★茜音ミニショッピングモール ※記事中の書名の下にあるURLはオンライン書店bk1( http://www.bk1.co.jp )  の書籍詳細ページのURLです。 その本の内容、値段、大きさなどの詳細情報  のほか、bk1に投稿された書評なども読めます。 ___________________________________ -- 今日のほのぼの -- ●少年は天才なのか〜『ひとが否定されないルール』 [2002年05月28日(火)] 『ひとが否定されないルール』日木流奈/著(講談社) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02166223 著者は脳障害の12才の少年。自由に手足を動かすことも、話すこともできない が、文字盤を使って会話をしたり、文章を綴ったりできる。NHKでドキュメ ンタリーが放送されて、かなりの反響があったらしい。 私は脳障害についてまったく知識がない。だから、脳障害と聞いても、何がで きて、何ができないのか、どんな生活を送っているのか、全くわからない。脳 障害児の知能についても全く知らない。一般的には、脳に障害があるというこ とは、知能も低いのではないかと思われがちだろう。しかし、脳の障害といっ ても、いろいろあるだろうし、この本の著者のことは新聞などで多少読んで知 っていたので、脳障害児の知能が低いという先入観はもたずに、この本を読み 始めた。 もともと、彼のことが世間に知られるようになったのは詩集を出版したことが きっかけらしい。私はその詩を読んだことがない。彼は脳障害児のための特殊 な教育プログラムを受け、それによって、言葉を覚え、あらゆる本を読み、た くさんの知識を貯えた。そして、吸収した知識を詩という形で外に放出したの だろう。彼に限らず、何かを吸収して、それを芸術なり、研究なり、形はいろ いろだろうけれど、吸収したものをなんらかの形で外に出すというのは、珍し いことではない。人は吸収したものを放出したくなるものだ。逆に、なにか作 品を作ろうとするときには、造り出そうとするもの(アウトプット)以上のも のを吸収(インプット)しなければ、いい作品はできない。だから、知識を大 量に溜込んだ著者が、詩という表現を使って、外の世界に作品を送り出したこ とはとても自然なことだと思う。 この本は、著者の日木流奈(ひき・るな)くんが日頃から思っていることを一 冊にまとめたものだ。もっとこうしたらみんなが幸せになれるのに、とか、人 との関係にうまくいってない人はこうしたらいい、とかそういうことが書いて ある。でも、内容は安っぽい自己啓発書か宗教のパンフレットのようで、かな りがっかりした。まちがってはいないのだけど、理想論、きれいごとなのだ。 なぜかといえば、体験が伴っていないからだと思う。彼の知識や見聞は人から 聞いた話というのがかなりの量を占めているようだ。障害を持っているので、 ふつうに学校にも通えないし、自由に行動もできないので仕方がない。そして、 人から聞いた話から想像して、これはこうした方がよい、と書いてあるのだ。 例えば、学校の話。彼自身は学校には通っていないのだけど、回りの人から聞 いた話をもとに、学校のことについても多く語っている。よい先生とはこうい う先生で、こういう先生はよくない、ということが書いてある。確かにそれは 正論で、間違ってはいないのだけど、私などは一概にそうは言えないのではな いかと思ってしまう。結局、あなたはそのどちらの先生にも習ったことがない でしょう、と反論してしまいたくなるくらい、正論すぎるのだ。ある先生が、 ある生徒にとっていい先生だったとしても別の生徒にとってはあまりいい先生 ではないことだってある。多くの生徒に嫌われている先生でも、家族にとって はいい父親だということだってある。世の中というのは複雑なのだ。 この本に書いてあるようなことは、ちょっと早熟な子供だったら誰でも考える ようなことだ。読みながら、そういえば私も小学生や中学生のころはこんなこ とを考えていたなぁと昔を思い出した。そういう意味ではとても子供らしい純 粋な、まっすぐな内容だ。同じ様なことを考えてはいたけれど、それを文章に する力を持っているという意味で、彼はすごいと思う。彼は「天才」とか、 「奇跡の詩人」とか言われているけれど、この本を読んだ限りでは「天才」と いう感じは受けなかった。普通の、ちょっと賢い、理想に燃える少年。確かに、 知識の量は同年代の子供に比べたら多いのかも知れないけれど、その分、彼に は普通の子供が経験するはずの実体験というものが抜けている。それでトント ンだ。 しかし、この本の文章のなかにもところどころ、「おっ」と思うようなフレー ズがあって、この子はこういう文章よりも、詩のほうが自分を表現できるんじ ゃないかと思った。内容はそうでもないのに、フレーズに輝きがあるのだ。た ぶん、詩の方がいいと思う。この本が売れてるのって、講談社のブランドが影 響してるのではないかと思う。詩集も講談社から出せば、書店に山積みだ。 それにしても、彼の存在は、脳障害の子供を持つ人たちにとっては大きいので はないか。脳障害児の実体を知らない人たちに脳障害児の知能の高さと、可能 性を知らしめたという意味でも、彼が有名になった意義はある。彼の教育プロ グラムに一日の大半を割く家族、そして本人の努力もすごい。彼が、これから どんな風に成長し、どんな大人になってゆくのか、楽しみだ。大人になった彼 の著作をぜひ読んでみたい。 ___________________________________ ●文章が書けないときもある [2002年06月02日(日)] ここ数日、忙しい。その用件も様々で、精神的に浮き沈みが激しい。その所為 か、パソコンの前に座るのが嫌になったり(たまにこういう時がある)。 ひたすら本を読んだり。 映画を観たり。 演劇を観たり。 でもなぜか文章が書けない。今は。明日は書けるかも。ネタはいっぱい溜まっ ているのだ。 ___________________________________ ●2冊になってしまった〜『ヴェニスの商人』 [2002年06月04日(火)] 『ヴェニスの商人』 ウィリアム・シェイクスピア/著、福田恒存/訳(新潮文庫) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=01241441 本を持ってくるのを忘れてでかけ、電車の中で読もうと思って買ったのだけど、 家にも一冊あるのを忘れていた。もしやと思って本棚をチェックしたら昔買っ た同じ本がみつかった。こういうミスはあまりやらないのだけど、『ヴェニス の商人』は内容もすっかり忘れてしまっていたし、すごく新鮮に楽しめたから いいか。 シェイクスピアは『ロミオとジュリエット』『マクベス』『ハムレット』など の悲劇は読んでいるのだけど、喜劇はあまり読んだことがない。この『ヴェニ スの商人』は喜劇に分類されるようだけど、それは読んでから気が付いた。喜 劇と言っても、全編がコメディという感じではないけれど、法廷の場面に代表 されるように、敵役のユダヤ人商人シャイロックをやっつけるまでに痛快な転 回を見せるところが楽しい。 ユダヤ人の商人シャイロックと言えば、悪徳非道な高利貸の代名詞のようにな っている。なんだか人種差別だとかいろいろ言いたくなってしまうけれど、こ の物語を読んで見れば、そんなことは抜きにただの悪役としてみればいいとい うことがわかる。桃太郎でいう鬼、赤ずきんちゃんでいうと狼のような役どこ ろ。単純な悪役。最初から、ただ単に悪いやつ。そして最後にはやっつけられ るのだ。そこに、若者達の恋愛や冒険が絡んで、少し複雑になって、最後には 大団円。とっても分かりやすい。 悲劇は暗くて、それはそれでいいのだけど、こういう分かりやすい喜劇は楽し くていい。シェイクスピアの喜劇を舞台で見てみたい。夏に見に行く一路真輝 主演の『キス・ミー、ケイト』は劇中劇でシェイクスピアの『じゃじゃ馬なら し』をやるみたいなので、ちょっと楽しみ。 『じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ』 ウィリアム・シェクスピア/著、福田恒存/訳(新潮文庫) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=00161060 ___________________________________ ●夢のホテル〜『箱根富士屋ホテル物語』 [2002年06月05日(水)] 『箱根富士屋ホテル物語』山口由美/著(トラベルジャーナル) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02169207 私の家からは箱根の山々が見渡せる。というよりも、箱根の山々に見下ろされ るような場所に住んでいる。その山々の峰の間から富士山が遠慮がちにちょこ っと頭を覗かせている。箱根に住んでいる訳ではないのだけど、箱根はとても 身近な土地だ。 子供のころは、箱根は「さびれた」温泉地なんだと思っていた。でも、箱根に はヘレン・ケラーやらアメリカの大統領やらジョン・レノンやら有名人がいっ ぱい来ていると知って、「意外と国際的じゃん」とちょっと箱根を見直したの だ。その有名人達が泊まったのが富士屋ホテル。富士屋ホテルといえば高級ホ テルの代名詞で、自分ではとても泊まれないような、手の届かない値段のホテ ルという印象がある。しかし、古いというだけで、なにがそんなに高級なのか よくわからなかった。なにしろ、たまにそばを通る時に建物を外からチラっと 見るだけで、子供の頃に一度だけロビーに入ったことがあるけれど(泊まった わけではない)、そのときもただの古い旅館という印象しか残っていない。 この本の著者の山口由美さんの『箱根人の箱根案内』(新潮OH!文庫)という 本を以前に読んで、私は箱根を新発見した。近くに住んでいて、箱根が好きで、 わりとよく知っていると思っていたのだけど、知らないこともいっぱいあって、 この本を読んで箱根がますます好きになったのだ。そして、著者が富士屋ホテ ルの元経営者一族の娘だということもこの本に書いてあった。あのホテルを自 分の家のように自由に出入りして、使っていたなんて。なんだかうらやましい 境遇だと思った。それと同時に、著者が富士屋ホテルと箱根をこよなく愛して いるということも伝わってきた。だから、この人が描く「富士屋ホテルの歴史」 はきっと面白いに違いないと思ったのだ。(ちなみに『箱根富士屋ホテル物語』 は『箱根人の箱根案内』よりも前に書かれたのだろうと思う。) 富士屋ホテルは現存する日本で最古のホテルらしい。ホテルというものが日本 にできはじめた最初の頃にできたホテル。その頃、箱根はただの温泉地だった が、創業者の山口仙之助が富士屋ホテルを創り、その客の為に道路を創り、営 業をし、箱根という国際的な観光地を創りあげた。この本は、著者の曾祖父に あたる仙之助がアメリカに渡った足取りを探るところから始まる。なぜ仙之助 はアメリカに渡ったのか、アメリカで何をしていたのか、そして帰国後、なぜ ホテルを創ろうと思ったのか。それは富士屋ホテルの歴史をひも解くカギにな ると同時に著者のルーツ探しでもある。そこがこの本の面白いところだ。 創業者の仙之助の跡を継いだのが仙之助の娘婿の山口正造だ。この人はもとも と日光のホテルの息子だった。日光といえば東照宮。豪華絢爛な彫刻を施され た建築物を間近で見て育った正造にその影響がないわけがない。この人はホテ ル内にさまざまな建築物を造った。それはどれも独創性に富んでいて柱の彫刻 などには東照宮の影響が見えかくれする。強烈な個性をもち、晩年は妻と離婚 し孤独を通した正造のホテル哲学や生きざまを通して、富士屋ホテルの発展の 歴史を探る。 正造が亡くなったあとは同じく仙之助の娘婿だった堅吉が経営を引き継いだ。 堅吉は仙之助や正造ほどの強烈な個性はなかったけれど、戦中戦後の混乱の中 で、堅実に富士屋ホテルを守り抜いた。著者は祖父である堅吉の思い出も語っ ている。とてもおだやかな人柄で声をあらげたりすることもめったになかった らしい。 その後、同族経営は終焉を迎えるのだが、この三人の経営者によって作り上げ られてきた富士屋ホテルの伝統と格式は今でも衰えていないと思う。一時期は 外国人しか泊めなかったこともあった富士屋ホテル。このホテルがあったこと によって、箱根は国際的な観光地になったのだと思う。たかが一つのホテルの 歴史でこんなに堪能できるとは思わなかった。読んでいくうちに、どんどん富 士屋ホテルが好きになって、一度は泊まってみたい気分になった。口絵の写真 には建物のそこここに残る歴史ある彫刻やインテリアの写真が載っている。実 物を見てみたい。すぐ近くなのになかなか遠い箱根富士屋ホテル。この手の届 かなさがまた高級感を生み出して、憧れを増幅させるのかもしれない。 ___________________________________ ●久々の生舞台〜『四月になれば彼女は』 [2002年06月11日(火)] 演劇集団キャラメルボックスの公演、『四月になれば彼女は』。5月の末に観 に行った。前回公演の『アンフォゲッタブル』は入院の為に観に行けなかった ので、久々のキャラメルボックス。その後、『アンフォゲッタブル』はスカパ ーで放送していたものを観れたのでよかったけれど、やっぱり生で観たかった。 入院で観に行けなくなったのはもう一つ、『天保十二年のシェイクスピア』。 いのうえひでのりや劇団☆新感線は好きじゃないので、あまり観に行かないの だけど、これはキャストが豪華(上川隆也、沢口靖子、古田新田など)だった し、かなり話題になっていたので観たかった。残念。 そんな訳で、『四月になれば彼女は』は約三ヶ月ぶりの生舞台。それまで、月 イチくらいのペースで観に行っていたので、これだけ間が空くと、もう「なん でもいいから舞台観たいよ」という気分。 この公演は再演になる。初演(確か1994年頃)はビデオで見ていて、若き日の 上川隆也が脇役でハッスルしていたのがとっても印象的だった。ストーリーは あまりよく覚えていない。 今回の再演にあたって、脚本が少し変わったみたい。わかりやすくなった。久 しぶりだったせいなのか、純粋に舞台がよかったからなのか(たぶんその両方) すごく心に染みてしまって、観ながらちょっとうるうるしてしまった。あまり 舞台を観て泣くことってないのだけど。女性陣が中心のストーリーで、男優陣 が脇に徹していた。これがよかった。キャラメルの女優陣ってうまいんだなぁ と素直に感心。若手の主力男優陣がほとんど出ていなかったのだけど、女優陣 だけでこれだけできるのかぁ。というより、男優陣があまり出ていないからよ かったのかも。 相変わらず衣装がかわいい。俳優さんによく似合っているし、ファッション雑 誌を見ているみたい。セットはシンプルだけど、効果的。最後には満開の桜が 浮かび上がる演出には「ほう、そうなっていたか」と、ちょっとびっくり。 私たちが観に行った回は客席に空席がかなりあって、「この劇団、大丈夫なの かなぁ」と本気で心配になった。でも、たまたまその日が空いていただけで、 その他の日には満員だったみたい。舞台自体はとてもよかったので、私個人的 には来れるものならもう一度観たいなぁと思った。キャラメルの舞台でそう思 うのって珍しい。だから、舞台の内容には不安はなかったのだけど、なんだか この劇団、いろんなことやりすぎていて、経営状態は常に不安だらけだわ。大 丈夫なのかなぁ。たぶん大丈夫なんだろうなぁ。 ___________________________________ ●お祭り気分〜『銀河旋律』 [2002年06月13日(木)] 演劇集団キャラメルボックス『銀河旋律』を観てきた。上演時間1時間のハー フタイムシアター。高校の演劇部などでもよく上演される人気作品だそう。こ の劇団の代表作だ。 今回は初演、再演で主演した西川浩幸、大森美紀子コンビとベテラン勢中心と した配役のAキャストと、岡田達也、小川江利子ら若手俳優を中心としたBキ ャストで上演。私が観たのはBキャストのほう。本当は両方観たかったのだけ ど、上演期間が短いし、スケジュールの都合で無理だった。 さすがに代表作というだけあって、よかった。脚本が面白いのだね。一時間に いろんなものがギュッと凝縮されていて一気にラストまで。初演、再演のビデ オを何度か見ていたからストーリー展開はかなりよく覚えていて、次はこうだ、 なんて心の中でわかっちゃうくらいだった。それでもビデオより生の舞台のほ うが何倍も面白い。 今、キャラメルボックスはとてもいい状態で波に乗っている・・ような気がす る。一時期のなんだか勢いだけの芝居が抜けてきて、芝居に余裕が出てきた感 じ。小川江利子、岡内美喜子、藤岡宏美などなど若手陣がとっても上手くなっ たみたい。それぞれに外部出演などでいろんなものを吸収してきているんだろ うなぁ。たぶん、劇団内の雰囲気もいいんじゃないかな。芝居を観ているとそ んな気がする。 そうそう、今回の『銀河旋律』はサポーターズクラブ結成10周年の記念という ことで、お祭り気分もあって、日替わりキャストというのがある。上川隆也も 日替わりキャストにキャスティングされていたけれど、いったいいつ登場する のかしら。私が観た時は、作・演出の成井豊さんが登場。昔は舞台にも立って いたらしいけれど、今は作・演出に専念している成井さんを舞台で見れたのは 貴重な体験だったかも。 ___________________________________ ●自滅する恋〜『椿姫』 [2002年06月16日(日)] 『椿姫』デュマ・フィス/著、新庄嘉章/訳(新潮文庫) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=00872593 新潮文庫の最後の方のページには関連書籍の広告が載っていて、それが結構、 心くすぐるラインナップだったりする。書名とあらすじを読むだけでも楽しい。 『椿姫』はチェーホフの『桜の園・三人姉妹』の後ろに載っていた。チェーホ フと『椿姫』、読者層が似ていると踏んだのかしら。私はまんまとひっかかっ たのだった。これも一種の芋づる式読書。 『椿姫』はオペラで有名。題名だけは知っていたのだけど、内容はよく知らな かった。簡単に言ってしまえば、娼婦と青年の悲恋の物語。もっと複雑な話な のかと思ったら、本当にシンプルな恋愛小説という感じだった。時代設定を変 えたら十分現代でも通用する。私はあまり恋愛小説を読まないので、なんだか くすぐったくなるような気分で読み終えた。 椿姫と呼ばれる美しい娼婦と青年が恋をするのだけど、彼女は娼婦であるがゆ えに二人が結ばれるのは難しい。この青年がまた、ほどほどにお金があるのね。 働かなくても食べていけるくらい。でも娼婦として彼女を囲うほどのお金はな い。女の方は娼婦でいれば贅沢な暮らしをできるのだけど、それを辞めて青年 と質素に暮らそうとする。このへん、健気。そんな女の気持ちを素直に受け入 れられない青年。女に娼婦としての仕事はして欲しくない、でも贅沢に暮らさ せてあげたい。しかし自分にはそれほどのお金はない。男ってほんとに。 結局、青年の父親がでてきて、身分がつり合わないという大問題発覚。女の方 が身を引く。しかし、それに気付かず、裏切られたと思う青年。男ってほんと に。 女はもともとの病気が悪化して、一人で死んでゆく。その知らせを受けてやっ てきた青年は真実を知り、後悔する。 これが悲恋かどうかは別にして、昼のメロドラマみたいで面白くて一気に読め てしまった。二人は基本的には愛し合っているのに、お互いの気持ちがすれ違 ったり、今までの生活感の違いなんかが邪魔をしてなかなか上手くいかない。 結局最後は結ばれないという意味では悲恋なのだけど、別に第三者が邪魔をす るとかそういうわけではなく、あくまで二人の気持ちのすれ違いで上手くゆか なかっただけという気が。努力次第でなんとかなったのでは、と思えてしまう。 おいおい、と突っ込みたくなる箇所がいくつもあって、そういう意味ではちょ っとコメディ。二人で散々すったもんだしたあげくに自滅という感じ。読み終 わっても悲しいという気分ではなかった。オペラはどんな感じなんだろう。 ___________________________________ ●みちゃった〜映画『模倣犯』 [2002年06月23日(日)] 中居正広主演の『模倣犯』観て来た。演技力に疑問のある中居くんだが、新聞 などの評は思ったよりよかった。原作の犯人のイメージにはかなり近い感じは したので、ちょっぴり期待して見てみた。 設定や結末は原作と変えてあるが、原作の雰囲気というかエッセンスはうまく 伝わってくる映画だった。なんとな〜く暗い感じ。原作のあの暗さはどうにも 我慢できなかったのだけど、映画でもその我慢できないような暗さがあって、 この映画を好きとは言えない。あの暗い感じは、宮部みゆきや森田芳光監督の 持ち味なんだろうか。あまり他の作品を読んだり観たりしたことがないのであ まりよくわからない。 さて、問題の中居くん。やっぱり演技はイマイチ。知能犯の心の深淵というか、 人間的な複雑さがあんまり感じられないんだよね。薄っぺらい感じ。ちょっと 狙ってるのかもしれないけど。 山崎努が主役のような映画。やっぱり山崎さんはすごいね。迫力が。映画が引 き締まる。木村佳乃は暗い演技。明るい方が似合う人なんだけどなぁ。ドラマ 「ウェディングプランナー」の演技は好き。あ、オレオのCMも。 この映画、原作を読んでなくてもわかるんだろうか。登場人物も多いし、いろ んなことが複雑にからみ合っていて、映画にするのは大変だったろうと思う。 もうちょっと、犯人たちの人間関係がよくわかったらよかったのに。 しかし、クライマックス(?)のCGはなんだったんだろう。あれはいただけ ない。ドーン、パーン(←ネタバレするのでこれ以上は言えない)。はぁ?  って感じだった。それまでちょっといい感じだっただけにがっくり。原作とは 違う結末も、なんだかなぁ、という感じ。いったい誰の○○(←ネタバレする のでこれ以上は言えない)なんだっていう疑問も。ちなみに、原作の結末も実 はあまり好きじゃない。あ、この小説自体が好きじゃないのかも。暗いしね。 映画『模倣犯』オフィシャルサイト http://mohouhan.yahoo.co.jp/ ___________________________________ ●不思議映像美。〜『玩具修理者』 [2002年06月26日(水)] 田中麗奈主演の映画のDVD。田中麗奈モノのDVDって、特典映像が多いみたい。 ファンは嬉しいかも。この作品の場合は、本編が短かめなので、特典映像の方 が時間が長いみたい。出演者のインタビューとか、田中麗奈の解説とかが収録 されていて、お得な気分。あまりテレビにでないけれど、こういう映像にはバ ンバン出てるのね。サービス旺盛。 作品は、幻想的な映像でとても綺麗。ストーリーもファンタジーのようなホラ ーのような。でも、田中麗奈じゃなくてもよかったんじゃない、という気がし ないでもない。出演シーンは少なくて、子役が演じる回想シーンにナレーショ ンが入っている。元宝塚トップの姿月あさとも出演しているのだけど、彼女な んて台詞ないし、顔映らないし、なんか可哀想。動きもCGで加工されちゃっ てるしなぁ。映像的にはとても綺麗なんだけど、役者的にはどうなんだろう。 おもちゃやで働く少年のもとに不思議な女性が訪ねて来る。その女性は子供の ころの出来事を語りはじめる。家の近所に居たという、どんなおもちゃでも直 してくれる玩具修理者の話。玩具修理者はなんでも直してくれる。おもちゃだ けでなく、死んでしまった生き物も・・・。機械と生き物の違いってなんだろ う。心ってなんだろう。女性は少年に問う。 少年を演じる忍成修吾も雰囲気のある俳優さん。個性派の麿赤兒もいい味がで ている。声だけの出演で美輪明広。さすが。メイキングの映像が面白かった。 箱根のおもちゃ博物館での収録はなんと二日間。ハードなスケジュールだわ。 ちょっと実験映画っぽい。おもちゃ博物館に行ってみたくなった(近いのにま だ行ったことがない)。 『玩具修理者』 http://www.gangu.jp/ 『玩具修理者』小林泰三/著(角川ホラー文庫) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=01673859 田中麗奈オフィシャルサイト 「Rena's Heart」 http://www.tanakarena.co.jp/ ___________________________________ ●魅力的なチェーホフ〜『かもめ・ワーニャ伯父さん』[2002年06月28日(金)] 『かもめ・ワーニャ伯父さん』チェーホフ/著、神西清/訳(新潮文庫) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=00237538 以前に読んだ、『桜の園・三人姉妹』(新潮文庫)よりも前に書かれたチェー ホフの戯曲。「かもめ」は「桜の園」と同様に「喜劇」となっているのだけど、 一般的に考えられる喜劇とはちょっと違う。どちらかと言えば悲劇的。 チェーホフは淡々としている。静劇と言われているらしい。事件らしい事件は 起こらず、登場人物たちの会話で物語が進んでゆく。ストーリーらしいストー リーもないのだけど、私はなぜだかチェーホフのこの静かな感じがとても好き。 読んでいて気持ちいい。訳文がいいからかもしれない。登場人物たちが、物語 の中で確かに生きているという気がする。作られた人物ではなくて、実在の生 きている人物のように感じる。登場人物たちが持っている悩みや、喜びの要素 が私の中にもあるのかもしれない。 よく、小説など読んでいて、登場人物がその物語の中だけで完結してしまって いるような気がすることがあるのだけど、チェーホフの場合は、登場人物たち が、その物語の前にも後にもちゃんと生きているような気がする。この物語は ここで終わってしまうけれど、この人たちはきっとこの後も悩みながら生きて ゆくんだろうな、と思える。だから私もがんばろうと思うのだ。 でも、「かもめ」や「ワーニャ伯父さん」は「三人姉妹」や「桜の園」に比べ ると、その「がんばろうエネルギー」みたいなものが少ない。「三人姉妹」な んかの方がより、未来に向かって頑張ろうというエネルギーが多い気がする。 「かもめ」では最後に自殺者も出るし。「ワーニャ伯父さん」も殺人未遂だし。 なかなか物騒だ。舞台を見るのならまず、「三人姉妹」を見てみたい。「かも め」は舞台で観たら難しそう。今、森光子が翻案された「桜の園」をやってい るようだけど、これにはあまり惹かれない。なぜだろ。森光子だから?(素敵 な女優さんですが) 『桜の園・三人姉妹』チェーホフ/著、神西清/訳(新潮文庫) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=00871366 ___________________________________ ●寒い世界〜『エンデュアランス号漂流』 [2002年06月30日(日)] 『エンデュアランス号漂流』 アルフレッド・ランシング/著、山本光伸/訳(新潮文庫) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02041056 極寒の南極で遭難した探検隊が生還するまでを描いたノンフィクション。時は 二十世紀の始め頃。南極大陸がまだまだ未知の世界だった頃の話だ。無線も発 達しておらず、流氷の漂う海を航海するのに十分な装備を持った船もない。そ んな時代でも南極点に到達しようとしたり、南極大陸を横断しようとしたりす る探検家はいたのだ。というよりも、そういう人たちがいたからこそ、今のよ うに南極に各国の基地を作ったりできるくらいの技術が発達したりしたんだろ う。 それにしても、探検家というのは、なぜわざわざ危険を冒して、無茶で無謀な ことをしようとするのだろう。やはり男のロマンなんだろうか。女性の探検家 もいるけれど、やはり男の人の方がそういう気持ちは分かるのだろうな。遭難 したのは気の毒だけれど、探検というのがね、自業自得という気もする。こん な時代だから、出発する前から命がけなのだ。成功と失敗は五分五分。成功し たらヒーロー。でも遭難して生き延びたっていうのは、どうなんだろ。かっこ いいのかな。死んじゃうよりは全然いいけど。 この話はなぜか優れたリーダーのお手本論みたいに言われている。探検隊のリ ーダーはシャクルトン。28人の乗組員全員を生還させた。でも、読んでみると、 シャクルトンが優れたリーダーだったというよりも、さまざまなラッキーな偶 然にかなり影響されて、全員が生還できたようなのだ。もちろん、リーダーも 優れていたのだろうけれど、実社会でリーダーとなる人が真似したり参考にし たりできるようなエピソードはあまりない。 シャクルトンは人間関係を見極めるのが上手くて、それぞれの性格を適格に把 握して、テントの部屋割りを決めたり、役割を割り振ったりするのが上手かっ たようだけれど、他人の適正や性格を見極めるという能力は先天的なものだろ うからこの能力のない人が参考にしようとしてもできないだろう。それから、 責任感も相当に強い。これもリーダーとしての資質の一つだけど、もともとの 性格なのだから参考にしようがない。 それよりは、寒さに耐えつつも希望を捨てずに生き抜いたこの探検隊のメンバ ーたちの群像としてこの物語を楽しんだほうがいい。それが実際にあった出来 事なのだから説得力がある。写真もたくさん載っていて、現実味がある。しか し、南極、氷、白い世界、寒さ、食料はアザラシやペンギン、という世界なの で、読んでいて寒くなるし、暗くなるかも。「南の島のフローネ」(昔のアニ メ)みたいな漂流記の方が楽しくていい。 (茜音「日々のほのぼの」より) http://akane.pos.to/akane/f/honobono.htm ・・・・・・─・─・─・──・──・──→この続きも日々更新中です。 ___________________________________ --更新情報-- ★茜音 http://akane.pos.to/ ・ 7月のカレンダーは太陽のイメージです。夏っぽい感じ。(02/06/30) ★ぱんだ雑貨店 http://akane.pos.to/sozai/ ・[背景パターン]水模様(6点)、石(2点)、コスモス(4点)、  菜の花(4点)、レンゲ(2点)、ストライプA(8点)追加しました。(02/06/08) ・[壁紙-Art]に夏っぽい(?)壁紙6点追加。(02/06/30) ★りんくる http://akane.pos.to/link-ru/ ・7月からのドラマのリンクなど追加しました。(02/06/29) ★茜音ミニショッピングモール http://akane.pos.to/shopping/ ・バナーを集めてWEB商店街を作りました。 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓  発行■そふえのりこ(祖父江典子)     【茜音-AKANE-】  「茜色通信」HP■登録、解除、変更はこちらから。    「茜色通信」は、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して  発行しています。  Copyright(C) 2002 Sofue Noriko  発行者の許可なく転載することを禁じます。 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛