□□□□□□□□□□ 茜色通信 Vol.0037 □□□□□□□□□□ 2002/02/06 Wed.---Since2000/01/26  発行部数104  「茜色通信」をご購読いただきありがとうございます。  私のサイトの更新情報と日記(日々のほのぼの)のダイジェスト版を  お届けします。    京都に行ってきました。やっぱり冬の京都は寒い。でも、観光客がと  ても少なくて、お寺独り占めという感じでした。行く先々で人力車の  お兄さんに声をかけられて、悪い気はしなかったものの、貧乏&健脚  自慢なのでお断りしました。それにしても、人力車のお兄さんはイイ  男がそろってる。それはなぜか、ということについて、一緒に行った  友人と推理して盛り上がりました。たぶんね、お給料が歩合制だとし  て、イイ男のほうがお客さんをたくさんゲットできるからだという結  論になりました。お客さんをゲットできない人は辞めて行くんでしょ  うね〜(あくまで推論)。 _/Contents_/ -- 今日のほのぼの -- ●宮沢賢二よりも好き〜『小川未明童話集』 [2001年12月20日(木)] ●一路真輝のリサイタル。二階席でも大満足。 [2001年12月22日(土)] ●夢の平安絵巻〜『千年の恋 ひかる源氏物語』 [2001年12月25日(火)] ●宮部みゆきは本当に面白いのか〜『模倣犯』 [2002年01月02日(水)] ●新春から松たか子〜『嵐が丘』 [2002年01月09日(水)] ●パンダが好き [2002年01月19日(土)] --更新情報-- ★【いるマガ】 ★茜音 ★ぱんだ雑貨店 ★りんくる =>>登録・解除・変更はこちらから http://akane.pos.to/common/f/akaneiro.htm ※記事中の書名の下にあるURLはオンライン書店bk1( http://www.bk1.co.jp )  の書籍詳細ページのURLです。 その本の内容、値段、大きさなどの詳細情報  のほか、bk1に投稿された書評なども読めます。 ※ブリーダープログラムに参加しているので、そのままお買い物していただく  と、私のポイントが加算されます。間接的にですが、サイトの運営費用の足  しになります。欲しいものがあったらお買い物してみてください。 ___________________________________ -- 今日のほのぼの -- ●宮沢賢二よりも好き〜『小川未明童話集』 [2001年12月20日(木)] 『小川未明童話集』小川未明/著(新潮文庫) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=00433747 小川未明は宮沢賢二ほど有名ではないけれど、日本を代表する童話作家だ。友 人に話すと、小川未明を知らない人もいて、それには逆に私が驚いた。教科書 にも載っていたのに。でも賢二ほどの知名度はないかもしれない。宮沢賢二は カリスマ的だからなぁ。 そういえば、先日、新見南吉の『てぶくろを買いに』(偕成社)の絵本を読み なおしていて、妙に感動してしまった。黒井健さんの挿し絵がまた良いのだ。 このお話も、『ごんぎつね』(偕成社)と共に有名。教科書にも載っていた。 きつねの子が人間の住む町まで行って、てぶくろを買うお話。『ごんぎつね』 はちょっと悲劇的だけど、『てぶくろを買いに』はなんとなく心がほんわかあ ったくなる。きつねの子が母きつねに「おててがちんちんする」と言う台詞が あって、この表現がなんともかわいくて、私はじーんと来てしまったのだった。 今どき、手が冷たいということをこういう表現で言う子供(親も)はいないよ ね。新見南吉も日本を代表する童話作家だ。 宮沢賢二は深すぎて難解。私にはあまり合わない。部分部分の表現や、言い回 し、文章の美しさなどには感動するのだけど、お話の内容はイマイチしっくり 来ない。 今年の夏の新潮文庫の100冊に『小川未明童話集』が入っていたので、ふと 思い付いて買ってみた。読んでみたら、賢二よりも断然わかりやすい。なにか を暗示しているようなところもあって、それを考えてゆけば奥は深いのだけど、 全体的にはお話の流れが明解で読んでいて楽しかった。 有名なのは『赤いろうそくと人魚』や『野ばら』だと思う。『殿さまの茶わん』 や『牛女』などもどこかで聞いたことがあるようなお話だった。 『赤いろうそくと人魚』は教科書に載っていたと思うのだけど、どんな話だっ たかすっかり忘れていた。最後はハッピーエンドかなと勝手に想像していたの だけど、かなり悲劇的というか、暗い話だった。『野ばら』も教科書で読んだ。 この話は当時から結構好きで、なんとなく話を覚えていた。悲劇といえば悲劇 なのだけど、敵対する国同士の兵士が心を通わすという意味ではあたたかい気 持ちになる話だ。こういう話を説教臭いと感じる人もいるかもしれないけど、 私は好き。 宮沢賢二は心の中へ中へと誘われるような童話が多い気がする。または、広大 な宇宙へと広がってゆくお話。だけど、小川未明はもっと現実的で、社会的だ。 人間と人間の関わり、交わりを描いている。他者と自分との関係。それは、ま さに人間を主役にして描いているものもあれば、命を持たないものを擬人化し て描いているものもあるのだけど、人間にも置き換えられるし、今の自分の回 りを見回せば同じような関係、状況を見出せそうな設定だったりする。読みな がら、そうだそうだ、と納得したり、なるほどなぁ、と感心したり、とにかく 感じるところが多かった。 でもやはり童話は、子供に語り聞かせたり、絵をつけて、絵本として楽しむの がいいような気がする。文庫で短編を一気に読むのは味気ない。『野ばら』な ど、読みながら無性に絵本として創りたくなった。著者が亡くなったのが1961 年。 まだ著作権が切れていないので勝手にWEBで絵本にはできないなぁとちょ っと残念に思った。 ___________________________________ ●一路真輝のリサイタル。二階席でも大満足。 [2001年12月22日(土)] musical show[DIVA2001] 一路真輝のコンサートに行ってきた。ミュージカル『エリザベート』ですっか り一路ファンになってしまったのだが、このコンサート、演出が『エリザベー ト』と同じ小池修一郎で、出演者も『エリザベート』に出演していた人たちだ ったので、思わずチケットを取ってしまった。コンサートといっても、ミュー ジカル仕立てで、いろんなミュージカルの美味しいとこ取りという感じで面白 かった。 先日の『ジキル&ハイド』で私の中での印象は最悪の日生劇場。このときは前 の人の頭で舞台の中央が見えない上に、肝心のミュージカルもイマイチだった。 今回は二階席。二階は傾斜があるだろうし、前の人の頭で見えないということ はないと思うが、如何せん舞台が遠い。チケットが届いてがっかりだった。会 場に行ってみると、二階席の中でも真ん中くらいの列。前が通路なので見通し はいい。しかし、どう考えても後ろから数えた方が早いくらい後ろの列。これ でS席。というか、私が申し込んだところではS席しか販売していなかった。 もしかしたら最後列も含めて二階席は全部S席かもしれない。こんな席種の決 め方ってあるのか。たぶん、一階席はファンクラブなどで埋められているんだ ろうな。一階も同じ値段のS席なのかなぁ。なんか釈然としない。 そんなちょっと暗い気分で開演を待っていたのだけど、開演したらそんな気分 は吹っ飛んでしまった。だって、面白い。楽しい。私は双眼鏡(オペラグラス などという高級なものではない)を持っていっていたので、遠いながらも出演 者の表情を見ることができた。双眼鏡で出演者をアップで見たり、肉眼で舞台 全体を見たりしていた。 第一部はミニミュージカルという感じ。劇場で深夜の警備員のアルバイトをし ているコーラスガールのマキ(一路真輝)がスターを夢見て毎晩、舞台の常備 灯に向かって歌っていたら、ある日常備灯の精が飛び出してマキに歌や演技を 教えるという筋立て。そのランプの精ならぬ常備灯の精が『エリザベート』に 出演していた7人。ダンス、歌などそれぞれの特技を活かして楽しい舞台を繰 り広げた。『エリザベート』では一言も喋らなかったトートダンサー3人が歌 ったりしゃべったりしていた。これはトートダンサーファンには堪らんだろう ね。『エリザベート』では一路真輝の息子役だった井上芳雄くんもがんばって 踊ったり歌ったりしていた。音楽はブロードウェイミュージカルの曲たち。私 はあまりよく知らなかったけど、いろんな曲が登場して、楽しめた。ところど ころ笑いをいれて、最後はかなりセクシーなダンスを披露してくれた。 第二部は『アンナ・カレーニナ』『キス・ミー,ケイト』『エリザベート』と いう三つのミュージカルの曲を順番に紹介。途中にトークが入って、素の役者 さんたちが垣間見れた。想像どおり、鈴木綜馬さんはとっても楽しい人だった。 そして、この人、いろんな顔を持っていて、百変化する。なんでもできちゃい そう。 『アンナ・カレーニナ』は上流婦人の不倫のお話。私は映画を見ていたので筋 はだいたい知っていた。これを朗読と歌を組み合わせたお芝居にしていた。ア ンナを一路真輝、その夫を鈴木綜馬、アンナの不倫相手を井上芳雄くんが演じ た。朗読は伊東弘美さん。カーテンの前にある椅子4脚という簡素なセットと、 出演者の動き、そして歌でこの男女の三角関係をうまく表現していて、やっぱ 演出の小池さんはすごいな、と感心した。そして、この3人、言うまでもなく 歌がうまい。ほぅ、とため息がでてしまう。 『キス・ミー,ケイト』は一路真輝が来年の夏に主演するミュージカル。内容 は知らなかったのだけど、歌は素敵。ちょっと見たくなった。 そして『エリザベート』。一路真輝はタカラヅカで死の帝王トートを演じてい る。だから今回、男役でトートの歌を聞けるのではないかと少し期待していた。 CDでは聞いたことがあるけど、やっぱ生で聞きたい。そしたら、歌ってくれ ました。「最後のダンス」と「闇が広がる」の二曲。ああ、もう感動。東宝版 の山口祐一郎トートが最高だと思っていたけど、一路真輝トートも最高。どっ ちがいいとは言えない。どっちもいい。一路真輝トート、こんなにいいと思わ なかった。もう声が、女役と違うのね。ほんと、重低音。ほんとびっくりした。 これは宝塚、ぜひ生で見なければ、とも思った。一路真輝はもういないけどね。 あとは鈴木鈴木綜馬さんとのデュエットの「二人のボート」などの主要な曲を 何曲か披露。これは舞台で何度も聞いていたけど、やっぱりいいね。『エリザ ベート』はほんと、曲がいい。ぜひまた再演してもらいたいものだわ。 『エリザベート』の余韻を残してコンサート終了。ああ、楽しかった。いつの 間にか二階席だったことを忘れてしまうくらい楽しかった。それどころがちょ っと得した気分。一緒に行こうと誘ったけど、断った友人に次の日、自慢して やった。ふっふっふ。 ___________________________________ ●夢の平安絵巻〜『千年の恋 ひかる源氏物語』 [2001年12月25日(火)] 『千年の恋 ひかる源氏物語』を観てきた。母と一緒。8スクリーンのシネコ ンのロビーは『ハリー・ポッターと賢者の石』を観に来たチビッコと親たちが 列を作って開場を待っていて、ちょっと唖然。喚声が響いてるよ。子どもパワ ーってすごいね。 千年の〜』は予想通りガラ空きで、おばさま、おじさまが数組。これはこれで 見やすくてよいのだけど、外の大騒ぎを観てしまうとちょっと寂しいかも。 主演は吉永小百合と天海祐希。天海祐希が光源氏で、吉永小百合が紫式部。ど ちらも美しい。もともと、ストーリーは期待していなかったので、もう、映像 がきれいならよいという感じ。そこのところは期待を裏切らない美しさで私的 には大満足。平安の女性の十二単衣や、家具、調度などが再現されていて、も う、夢の世界だわ。なにげに、カツラもすごく自然でよかった。もっとヅラっ ぽいかと思ってたけど。 彰子(しょうし)の教育係をまかされた紫式部が、自分が書いた「源氏物語」 を語って聞かせるというストーリー。「源氏物語」の部分は、空想の世界なの だ。だから、天海祐希が光源氏でもいいの。美しすぎると言われようが、女っ ぽいと言われようが、おとぎ話なのだから、いいのだ。最近、タカラヅカの雑 誌をいっぱい見ていて、男役さんの写真を見慣れていた所為か、天海祐希の光 源氏も全然違和感なかった。でもこれって宝塚ファンだけかも。一般人はどう なのかしら。 全然期待してなかったとはいえ、ストーリーはホントにう〜んって感じ。まぁ、 あの壮大な「源氏物語」を二時間何分の映画にするのは大変だろうけど、途中 で何度もでてくる松田聖子はなんなんだ。急に歌い出す。しかも歌詞が変。宝 塚のミュージカルをちょっと意識したのかなぁ。それにしても・・・。 これって、「源氏物語」を全く知らない(読んだことのない)人が観ても訳が わからないんじゃないかな。紫式部がでてくるところが現実で、源氏が出てく るところは夢の世界という二重構造も話を分かりにくくしている。この設定自 体は好きだけど、「源氏物語」を知らない人が観たら分かりにくいよね。 源氏に愛される女性たちは豪華キャスト。紫の上が常磐貴子。明石の君が細川 ふみえ。藤壷の宮が高島礼子。朧月夜が南野陽子。その他もろもろ。なぜだか、 明石のシーンは竜宮城みたいで、原作ではそんな雰囲気じゃなかったような気 がするんだけど、映画ではフーミンは乙姫様っぽい設定だった。 それにしても、やっぱり、私の中のイメージとみんなちょっとづつ懸け離れて いて、こういう名作を映像化するのって難しいと思った。高島礼子、南野陽子 は色気ムンムンでいい感じ。女同士の濡れ場も賛否両論だろうけど、それほど 嫌悪感はなかったなぁ。紫の上は私の中ではもっとやわらかい印象があるので、 常磐貴子ではちょっと気が強すぎかも。源氏の正妻の葵の上は中山忍で、この 二人は私の中ではキャスティングが逆という感じがした。でも中山忍では紫の 上としては物足りないかも。映画的に。葵の上は源氏の最初の奥さんで、あま り愛されなかったけど、なんかそういう物悲しい感じが好き。源氏に登場する 女性の中では一番好きかも。紫の上は源氏に好きな様に運命を弄ばれちゃって、 そのかわりすごく愛されるのだけど、それよりは、葵の上の方が冷静に世の中 を見ている気がして好きなのかも。 「源氏物語」はすごく昔に、田辺聖子さんの訳で読んで、そのあとに大和和紀 さんのマンガ『あさきゆめみし』を読んだ。『あさきゆめみし』は名作。ちょ うど、コバルト文庫などの少女小説が流行っているときには、氷室冴子さんが 平安モノを書いていたりして、そういうものを読んでいたから、平安という時 代が馴染み深い気がする。そうそう、『陰陽師』も平安時代だった。平安時代 って、占って、お出かけしちゃいけない日があったりとか、こっちの方向に行 っちゃいけないから遠回りしようとか、移動が徒歩か牛舎だったりとか、男の 人が、勘と噂で好みの女性を見つけて夜這うとか、でも朝になってみると全然 美人じゃなかったりとか、なんかそういう、現代にはないのんびりした風習や 雰囲気があって、憧れる。でも本当は貴族なんて人口のほんの一部で、ほとん どの人は人間扱いされていない、農民だったみたい。どの時代にも光と影があ るのね。 映画を見終わってロビーに出たら、『ハリー・ポッター』の次の回を待ってい る子ども達と『ハム太郎』の次の回を待っている子ども達で朝よりもっと混雑 していた。子どもを連れてくる親も大変だよね。 『千年の恋 ひかる源氏物語』 http://www.toei-group.co.jp/sennennokoi/ ___________________________________ ●宮部みゆきは本当に面白いのか〜『模倣犯』 [2002年01月02日(水)] 『模倣犯』宮部みゆき/著(小学館) 上巻http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02006986 下巻http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02006987 宮部みゆき作品を読むのは『R.P.G.』(集英社文庫)に続いて二作品目。 宮部みゆきさんは、いまや超売れっ子作家だが、なんとなくとっかかりがなく て、最近になって初めて『R.P.G.』を読んだ。が、あまり好きな感じで はなかった。なにが好きじゃないのか、このときはうまく説明できなかったし、 この作品以外のものを読んでないので、なんとも言えなかった。書評を先にた くさん読んでしまっていた所為かもしれないとも思った。 今回『模倣犯』の書評も先に随分読んだ。でもその所為ではなく、やっぱりあ まり好きではない。分厚いハードカバーの上下巻(しかも二段組)を読みなが ら、「私はいったい宮部みゆきのなにが嫌いなのだろう」と、そればっかり考 えながら読んでしまった。これはちょっと反省。でもね、冒頭からなんだかす ごく違和感があって、物語に入っていけなかったのも事実。 そもそも、『模倣犯』を読もうと思ったのは、新聞、雑誌などの書評欄で取り 上げられていて、それが軒並み「面白い」と太鼓判を押しているもんだから、 どれだけ面白いのか、気になるでしょう、やっぱり。簡単にストーリーも説明 されているのだけど、ミステリーなので結末を書かないというのはお約束だし、 話も複雑なので、書評だけではよくわからない。これは読んでみるしかない、 と思ったのだ。 いやぁ、ストーリーというか、構成というか、それはすごい。書評でベタ誉め されるのも納得。はまる人ははまるでしょう。実際、私も正月休みをいいこと に、ほぼ一日中、本とにらめっこして一気に読み切ってしまった。半分はスト ーリーに引きずられて、半分はこの本を早く読み終えて次の本を読みたかった から。書評や読者からの投稿文を読むと、「こんなに結末を先に読んでしまい たいと思った本は久しぶりです」というような内容のものが結構ある。でも私 は特にそうは思わなかった。なんとなく結末がどうなろうとあまり興味がない、 という感じ。最終的に読み終わった後も、「ふうん、そうなの」という感想だ った。だからと言ってつまらないという訳じゃないんだけど、その辺が難しい。 ちょっと横道に逸れるが、先日までTBSやっていた『恋を何年休んでますか』 というドラマを欠かさず見ていた。本当ならたぶん一回目から見ようとなんて 思わない種類のドラマなのだけど、気になる役者さん(山口祐一郎ね、ミュー ジカルの)が出ていたので、見ていた。途中まで見てもう嫌になってしまった のだけど、友人とオン・エアの次の日に話題にするためもあって、結局、最終 回まで見た。このドラマ、主婦の不倫(淡い恋心?)がテーマで、三人の主婦 がそれぞれに夫への愛、過去の恋人との関係、若い男性への恋心に悩んだり、 亭主が若い娘と浮気してたりする。それで、なんだか世間的にも人気があった らしく、ちょっとしたブームにもなっていたらしい。私の友人も次の展開が気 になると言って毎週楽しみにしていた。でもね、私はこのドラマに出てくる人 たちがどうなろうと別にどうでもよかった。離婚しようが、元のサヤに収まろ うが、どっちでもいいじゃんと思って見てたのだ。なんだかこのドラマに出て くる人たちがすごく自分勝手に行動していて、それぞれに思い悩んでいるのだ けど、それも結局身から出たサビで、もっと前向きな解決方法があるのにわざ わざ、ややこしい方にややこしい方に事態を展開させているみたいで見ていて 嫌になってしまった。だから、このドラマの結末がどうなろうと別にどっちで もいいやと思ってしまったのだ。 そう、『模倣犯』についても同じような感覚だった。微妙に違うけど、似てる 感じ。結末がどうなろうと別にいいよ、って思った。『模倣犯』はミステリー だから、どういう風に解決するのかちょっとは気にはなるんだけどね。でも絶 対に未解決で終わるということはないだろうし、最終的にはどういう形であれ 解決するだろうから結果がわかってると言えばわかってるようなもんだわ。 結局は、ミステリーも経過を楽しむもの。宮部みゆきの何が嫌って、文章が私 の肌に合わないのだ。文体がなんとなく美しくないというか、古臭いというか、 いちいち気になる。登場人物たちの話し言葉も、若い人の台詞なのに普段絶対 使わないような「快哉(かいさい)」なんていう単語が入っていたり、女子大 生がmailのことを「メイル」と言ったり(普通は「メール」だよね)、微妙に 不自然。登場人物の描き方も、この人ってこういう行動に出る人なの、この人 はこんな風な精神状態にならないでしょう、という箇所が幾つもある。こうい う風に感じるのは私だけかもしれないけど。 変に説明が多くて、私としては登場人物の行動や会話から心情を推察させるよ うな描き方をして欲しいのだけど、なぜか内面の感情を文章で事細かに説明す る文があちこちにあって、興醒め。全部説明しちゃったらつまらないじゃん。 そして、逆に状況説明が少なすぎてよくわからない場面もある。 よく、小説家や漫画家が、登場人物たちの性格を決めておおまかなストーリー を決めて書き出すと、途中から登場人物たちが作者の意図の反して勝手に動き 出す、という話を聞く。そういう作品は面白いのだ。活き活きしている。 『模倣犯』はたぶんそうじゃないと思う。作者の思惑どおりに登場人物たちが 行動して、思惑通りにストーリーが進んで、思惑通りに結末に向かう。これは これでいいのだ。そうじゃないとストーリーが変な方向に行ってしまうだろう から。でも、なんだか登場人物たちの動きが窮屈でつまらないような気がする のだ。まるで作者が作った箱庭のなかで小さな小人のような登場人物たちがコ マコマと動いているような感覚。ちょっと違う動きをすると、「そこそこ違う よ」と元の動きに戻されてしまう。 妙にリアルな反面、妙に作り話っぽい。そして、想像の余地がない。全部説明 されてしまう。物語に必要な夢の世界もない。登場人物もそれほど魅力がない。 京極夏彦作品にでてくる榎津礼次郎のような「そんなやついないだろう」的な 人物も出てこない。ちょっとはこういう人を出して欲しいのよね。だって、フ ィクションはノンフィクションには絶対になれないのだから、いくらリアルを 追求するとしたってフィクション的な部分を削除しちゃったらつまらない。そ うそう、だから、『模倣犯』を読みながらすごく思ったのは、「これだったら ノンフィクションのルポルタージュを読んだ方が10倍面白い」ということ。 宮部さんは人の感情や表情を現すときによく、例えを出す。例えばこれこれこ うしたときにするような表情、とか。これがまた突飛で、物語の流れを留めち ゃってる。その例えはないよ、って、読みながらがっくり。私が個人的にしっ くり来ないだけで、他の人にはすごくわかりやすい例えだったりするのかもし れないけど。 ああ、長々と宮部みゆきの嫌なところを書いてしまった。そうは言っても、人 気作家だし、これからもヒット作を世に出すだろうし、ストーリーは面白いし、 私もまた読んじゃうかも。そしたらまた、どこが嫌でどこがいいか、長々と書 いちゃおっと。 ___________________________________ ●新春から松たか子〜『嵐が丘』 [2002年01月09日(水)] 新橋演舞場でやっている『嵐が丘』を観てきた。主演は松たか子。この演目と 新橋演舞場という組み合わせが面白い。新橋演舞場に行くのも初めてだったの で、興味津々だったのだけど、客席にちょうちんが飾ってあったり、花道があ ったり、いつも行っている劇場とは違った感じで面白かった。席は二階の一番 前だった。 エミリー・ブロンテの『嵐が丘』が原作。何度も映画化されているし、名作と 言っていい。私もその昔、新潮文庫で読んだことがある。でもね、そのタイト ルの通り、荒野の物語で、狭い土地で少人数の登場人物がぐちゃぐちゃとした 人間関係を繰り広げる話で、私の性に合わなかった。淡々と進む物語を我慢し て読んだものの、結局、最後まで煮え切らず、よく理解できなかった。要する につまらなかったのだ。この本のどこが名作なんだろう、と思った。その時は。 その後だいぶ経ってから映画を観た。映画でもやっぱり暗い感じで、登場人物 たちが心の闇や狂気をさらけだしていた。でも、小説よりは分かりやすかった。 この小説は映像化したほうがいいなと思った。そして、ちょっとだけ、名作た る所以がわかったような気がした。 今回の公演は座長である松たか子が自ら望んでこの演目を選んだという話をど こかの雑誌で読んだ。松たか子さんはこの話に魅力を感じているのだ。私は松 たか子という女優がとても好きなので、その女優さんが自ら演じてみたいと思 うからには『嵐が丘』という作品にはやはりそれだけの魅力、それだけの力が あるのだろうと思う。私が小説を読んだ時には何も感じなかったのだけど。 そしてこの舞台。なんと、三幕もある。途中で30分と20分の休憩を挟んで3時 間40分。長い。でもよかった。映画も見たにもかかわらず、原作の筋をあまり よく覚えていなかったので、原作にあまりとらわれずに観ることができた。プ ログラムを読むまで気付かなかったがどうやら原作よりも短くなっていたよう だ。舞台は松たか子演じるキャサリンが死ぬところで終わるのだけど、原作で はその子の代までの話になっている。 この話は登場人物たちの内面をどう表現するかがキーポイントだと思う。私が 小説を読んで全然よくわからなかったというのは、たぶん、登場人物たちの行 動が不可解だったのだ。行動というのは表面的なことで、その行動の裏付けが 内面の葛藤。普通は行動と内面の気持ちというのは密接で行動を見ることで内 面を感じることができるのだけど、この登場人物たちはどこがどうなってそう いう行動に出るのかというのがさっぱりわからなかったのだ。当時の私には。 舞台ではそのあたり、上手く表現されていたと思う。だいたい、最初のシーン から私の記憶の中のキャサリンとヒースクリフとは違う印象だった。私が長年、 記憶の底に思い描いていた『嵐が丘』の登場人物よりも舞台の登場人物たちの 方が何倍も人間らしい。私の中の登場人物たちは理解不能な人たちだったから。 ヒースクリフ(岡本健一)はキャサリンの父親がどこかから拾ってきてアーン ショー家の使用人として育てられた。幼い頃からキャサリンと遊びまわり、二 人はお互いに惹かれあっている。ヒースクリフをかわいがっていたキャサリン の父の死をきっかけに、ヒースクリフはキャサリンの兄から冷たく扱われるよ うになる。キャサリン(松たか子)がリントン家のエドガー(鈴木一真)と結 婚することになり、ヒースクリフはアーンショー家から姿を消す。数年後に戻 ってきたヒースクリフは大金持ちになっていた。そして、自分を裏切ったキャ サリンとアーンショー家に復讐を始める。しかし、キャサリンとヒースクリフ は心の底では常に惹かれあっていて、それゆえに二人の激しい気性がぶつかり あってしまう。 エドガーの妹イザベラはヒースクリフと結婚し、結婚後に冷たくあしらわれ復 讐の道具にされてしまう。このイザベラ役の細川直美がよかった。テレビで見 てもかわいいが、あの派手な顔(目が大きい!)は舞台で見るとちょうどいい。 で、演技も予想以上によくて、声も通るし、独白もとてもよくて、この人は舞 台に向いていると思った。また一人、舞台での贔屓ができた。 アーンショー家やリントン家の使用人たちが脇を固めて、ときどき笑いをとっ てくれるので、かなり救いのない物語にもかかわらず楽しい舞台になっていた。 舞台ってこういうところが好き。シリアスな物語でも笑いが起こることが不自 然じゃない。 松たか子は相変わらずかわいくて、狂気に陥っていくキャサリンを熱演。岡本 健一は前回の『セツアンの善人』よりも野性的な役でポイントアップ。二人と も、今度はもっと小さな劇場で見たいなぁ。大きい劇場でももっと舞台に近い 席が取れるといいのだけど。 脚本と演出は岩松了さん。この人の舞台は初めて。でもずっと気になっていた ので、観れてよかった。結構好きかも。今回はちょっと新橋演舞場の客層に合 わせた演出になってたのかしら。 『嵐が丘』E・ブロンテ/著(新潮文庫) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=00533660 ___________________________________ ●パンダが好き [2002年01月19日(土)] 基本的に動物はなんでも好きなのだけど、最近はパンダがお気に入り。世間的 にも、最近パンダがちょっとしたブームらしくて、テレビCMなどでもよく登 場している。火付け役はやっぱり新潮社の「Yonda?」くんかなぁ。 どんな動物が好きか考えてみると、なんとなぁ〜くだけど分類できる。すごく 大雑把で自分勝手な分類かもしれないけど。 まず、ネコ化の野生動物。ライオン、トラ、チーター、ヒョウ、サーバルキャ ットなどなど。あのワイルドさと、ネコ化特有のしなやかさ、それとネコっぽ い愛嬌があるところが魅力。 それから、模様のある動物。特に縞模様。シマウマ、トラ、ヒョウ、オカピ、 キリン、パンダなどなど。これはやっぱり模様によってスタイリッシュな印象 があって、最近流行ってるっぽいヒョウ柄に代表されるように、おしゃれな感 じがいい、のだと思う。でもパンダはおしゃれとはちょっと違うけど。 そして、極めつけは白黒の動物。パンダ、シマウマ、ペンギンなど。あと、真 っ白とか真っ黒の動物も好き。シロクマ、黒ヒョウ、ユキヒョウ、ゴマフアザ ラシの赤ちゃんなど。なんだろう、白黒はっきりしてるのが好きなのかも。わ かりやすいし。 海のほ乳類も好きだなぁ。クジラ、イルカ、ジュゴン、マナティ、アザラシ、 トド、オタリアなどなど。動物園で発見すると釘付けになっちゃう。なんと言 っても、私、生まれ変わったらクジラなりたいのだ。あの広い大海原を悠然と 泳ぐ姿、憧れちゃう。 あと、ぬいぐるみっぽい顔の動物。これは、昔よく、ラッコとかコアラに似て るって言われたことがあって、それ以来、他人とは思えないから。ぬいぐるみ っぽいってどういう顔かわからないけど、要するに、クマとかコアラとかそう いう系統のもの。パンダもこの仲間よね。その他にはタヌキやアライグマなん かもこの系統。 基本的には、ペットよりも野生の動物が好きで、自然の生態系の中で自由に生 きてる感じに惹かれる。弱肉強食の世界で食うか食われるかというギリギリで 生きているというのも、私の日常にない感覚で魅力的なのだ。ま、ペットはペ ットでまたかわいいのだけど。 うちでは両親が嫌がるのでペットは飼っていない。飼えばかわいいと思うのだ けど、世話をするのが大変だし、病気になったり死んだりするとかわいそうだ から嫌なのだそうだ。私が勝手に飼ってもよいのだけど、餌代もバカにならな いし、それこそ病気になったときに治療費を払えないので、飼うのは諦めてい る。まずは自分自身を養えるようになってからだわ。 で、パンダ。ブームというだけあって、最近になって相次いで写真集が発売さ れている。ついつい買ってしまう。見ているとほんとに可愛くて、癒される。 本当はクマの仲間だから、それなりに力も強いのだろうけど、あの模様に騙さ れちゃう。コロコロしているし、遊んでる姿も愛らしい。なんか、こいつらな んにも考えてないんだろうなぁ、とか思うと、うらやましいような気がしてき て、自分も見習って思い悩まない生活をしてみようと思う。パンダになりたい なぁ。 ●パンダの写真集 『コウコウとタンタン』 中村 翔子/文、 神戸市立王子動物園/写真・監修(BL出版) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02065688 『幸福(シンフー)?』佐渡多真子/著(集英社) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=02087012 『パンダ』 パンダ研究所/編(求龍堂) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=01709807 『ふるさとのパンダ』ケレン・スー/著(小学館) http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi?aid=p-akane01465&bibid=01598160 (茜音「日々のほのぼの」より) http://akane.pos.to/akane/f/honobono.htm ___________________________________ --更新情報-- ◎いるかプロジェクトを1月いっぱいで閉鎖しました。  それに伴ってメールマガジン【いるマガ】も廃刊となりました。  バックナンバーはしばらくの間は見られます。 ★【いるマガ】 http://akane.pos.to/iruka/f/mm.htm バックナンバー(No.101最終号)掲載しました。(02/02/06) ★茜音 http://akane.pos.to/ トップページのカレンダー更新しました。 2月はパステル画です(02/02/01) ★ぱんだ雑貨店 http://akane.pos.to/sozai/ パステル画の壁紙7点追加しました。(02/02/02) ★りんくる http://akane.pos.to/link-ru/ 新しいリンク追加。美術館、1月からのTVドラマなどなど。(02/01/22) ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓  発行■そふえのりこ(祖父江典子)     【茜音】     【アトリエの屋上BBS】       「茜色通信」HP■登録、解除、変更はこちらから。    「茜色通信」は、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して  発行しています。  Copyright(C) 2002 Sofue Noriko  発行者の許可なく転載することを禁じます。 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