どちらの著書も読んでいたので、興味深く読み進められた。梅田氏の「シリコンバレー精神」、平野氏の長編「葬送」も先に読んでおけばよかった。平野氏の作品は積ん読状態のものも何冊かあるのよね。芥川賞を受賞したときにやたら難しい漢字を使っているとかなんとか批評されていて、なんだか小難しい印象があったのだけど実はそうでもなくて意外に読みやすいと思ったのだった。ブログを読んでも、めちゃめちゃ普通じゃん。ってちょっと意外だった。もっと「日本語」にこだわりがあるのかとおもったのだけど、こだわりがあるのは「日本語」とは別のところなのかもしれない。
その別のところ、というのがこの対談集でちょっと見えた気もした。私の言葉ではうまく説明できないのだけど、人間同士の関わり合いの深淵というか、個々の集合体としての社会とか。「人間」に興味があるのかも。自分の世界に孤立している人ではなくて、積極的に「関わり」を求めていくような。「自分」は「自分」なのだけど、その「自分」を保ったまま「他者」との関わりを探っているような。
平野氏は、私の1歳年下。この対談のなかでは1975年以降に生まれた世代(平野氏は1975年生まれ)とその前とを明確に区別している。ネットの世界では一年というのが大きな差なので、それはよくわかる。でも、ま、ほぼ同世代ってことで(私は一浪しているので大学卒業年は同じ?)その時代、時代を同じ世代として生きたものとして共感できる部分はとても多い。ネットに対する意識とかそういうもの。
一方で、ネットを日常的に使っているものとしては、ウェブ世界に生きているような梅田氏の言っていることに納得してしまう部分もとても多い。この対談ではお二人が対立的な立場に立っているわけではなく、まさに「ウェブ」と「人間」について議論しているので、読みながらも、その部分、部分によって、梅田氏側に共感していたり、平野氏の意見に納得していたり、はたまた、難し過ぎてどちらが言っていることもわからなかったりした。
面白いな、と思ったのは、ウェブというサイバーな世界についての対談なのだけど、何時間にもわたって顔をつきあわせての対談という非常に人間的なものになっている点。チャットや、メールのやりとりではないのだ。
個人的な感覚として、メールやチャット、掲示板などのネットでのやりとりでは短時間で人間の奥深いところまで踏み込むというのは不可能。お互いに同じ空間で顔をつきあわせて会話することで、会話の内容以上の多くの情報がやりとりされて親密感、信頼感が増す。
ウェブの世界というのはやはり虚構の世界で、それは利用する分にはいいけれど、利用されてはいけない。土台にあるのはやはり人間の力で、人間は人間同士の直接的な関わり合いが皆無になってしまったら、成長していかないのではないかと思う。ネットの世界だけではお腹いっぱいにならないし、キスもセックスも排泄もできない。ウェブの向こう側にいるのは、あくまでも生身の人間なのだ。
だから、「ウェブ」と「人間」をテーマにしたこの対談はとても正しい。「ウェブ」は「ウェブ」だけではなくて「人間」とセットで語らなければならないのだと思う。
対談の中で、お二人の親密度が増せば増すすほど、(ウェブではなく)人間同士のコミュニケーションの素晴らしさを再確認するのだった。
シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (ちくま文庫)梅田 望夫(著) 筑摩書房 ¥ 672 [文庫] 2006-08-10 ISBN:9784480422538 / ASIN:4480422536 |