勝ち残りましょ、銀座で―老舗「銀座テーラー」を再生させた3代目女社長の手づくりビジネス 鰐渕 美恵子(著) 徳間書店 ¥ 1,575 [単行本] 19cm x 13cm , 228P 2006-09 / ISBN:4198622345 |
著者は老舗の紳士服店、銀座テーラーの三代目社長。私は銀座テーラーというお店を知らなかったのだけど、歴代総理大臣も顧客に持つような伝統あるお店らしい。
初代社長が一代で築き上げたお店を二代目が潰す。よくある話。二代目であった著者の旦那様はバブルの影響で儲けた、まさにあぶく銭で遊び歩き、銀座の帝王とも呼ばれた人。そんな生活がたたって病気になるも、遊び癖、浪費癖は直らず、お店は傾きかける。
これではいけない、と結婚以来専業主婦だった著者が会社に入り、見事に立て直すまでのサクセスストーリーだ。
いわゆるお嬢様育ちの著者だけど、毎夜遊びに出かける夫の傍ら、静かに家庭を守り、舅の看病をし、いざ会社の危機となるとプライドを捨てて必死に営業活動をし、社員の信頼を得てゆく。なんだか、人間的にとても魅力のある人だと思った。
会社を存続させるために、大胆なリストラも断行するのだけど、それによって残った社員たちは救われる。一見、冷淡なようだけど、実は正しい選択なのだ。
リストラした社員たちに裏切られて、店の目の前に新しい店をオープンされて、ロゴマークを盗まれ、顧客のデータをまで改ざんされていることが発覚。しかし、こういうことをする人たちは放っておいても自滅する。必要以上にこういう人たちを恨みに思わないところも好き。そうそう、そんなんだよね。そういう事をする人たちだから、リストラされちゃうのよ。だから、やめさせて正解だったってこと。
商売って、反則技を使うと、結局あとで自分に返ってくるのだ。一時期は儲かっても、あとで反動が来る。だから、正攻法でこつこつとやっている人が最期は勝つ。お客さんの信頼を得る。反則すると、お客さんもそれを分かっているから、店を信頼されずに、二度目はなかったりする。真っ正直にやっているところが、生き残ってゆくのだ。
この人のやり方は、すごく正攻法で、真っ正直。自社の職人や社員を信頼して、製品に自信を持っているから。こういうお店とはずっと付き合っていこうと思える。
逆に、ものを売る商売をしている人は、こういう姿勢じゃないといけないよね、って思う。売りつけるのが目的ではなくて、お客様がほんとうに必要としているものを、適正な値段で買っていただくというのがお店と顧客の正しい関係なのだ。
だから、スーツの値引きはしない。職人たちがそれだけの手間暇かけた製品だから。それだけの価値があるものだから。
オーダーメイドのスーツというのは、体にぴったりして、姿勢がよく見え、しわにもなりにくいらしい。なるほど。お客様ひとりひとりの要望を聞き、ポケットの数を増やしたり、デザインにも工夫がある。いいものだから、高くても長持ち。
著者はその良さを身をもって実感しているからこそ、自信を持ってお客様に勧めるのだ。
それにしても、自分の息子が店を潰すことを予感し、その妻の才を見込んだ初代社長と、妻が社長になることをすんなり赦した二代目社長の選択も正しかった。二代目が社長の座にしがみついていたら、店は潰れていたかもしれない。
なんというか、そういう、周りの人を巻き込む力というか、運を味方に付ける才能というか、そういうものにも恵まれた人なんだなぁと思った。そういうのは、ひがみっぽい人から見たら、運が良かっただけ、と言われるかもしれないけど、私は、その人の人柄や雰囲気から出るオーラのようなものが影響しているのだと思う。だからそれはただ単に運がいいのではなく、その人の才能の一部なのだとおもう。そしてそれは、後から身につけられるものではなくて、生まれ持ったものだと思う。ご本人が自覚しているかどうかは別にして、その才能をうまく生かしたからこそ、成功したのだと思う。
読んでいて、たびたび、別の選択肢もあったのにあえてこっちを選んでいるのかな、他の人だったらこうしていたかもしれないな、という場面があって、ああ、この人はとんとん拍子に生きているように見えて、ちゃんと自分で自分の行く道を選んでいる人なのだと強く思った。